柔道整復学 理論編 鎖骨の脱臼
鎖骨の脱臼(胸鎖関節脱臼、肩鎖関節脱臼)
概要
・複数脱臼(肩鎖、胸鎖同時に脱臼)の頻度は低い
・青壮年 > 幼小児
・肩鎖関節上方脱臼が最多
胸鎖関節脱臼
(分類)
1.前方脱臼 最多
2.後方脱臼
3.上方脱臼
※下方脱臼はない
胸鎖関節前方脱臼
多くは完全脱臼
(発生)
1. 肩、腕に対して働く後方への介達外力
2. 物を投げるなどの筋力作用
(症状)
1. 鎖骨近位端部の前方突出(鎖骨の走行変化)
2. 患側の肩→下垂、頭部→患側に傾ける(胸鎖乳突筋緩めるため)
3. 患側上肢の運動制限。特に外転
※鎖骨近位端骨折と症状類似。鑑別が必要。
骨折は軋轢音、脱臼は段発性固定
(整復法)
1. 助手は患者の背後、膝がしらを両肩甲骨間の脊柱部にあて
両手で肩をつかみ強く後外方へ引く
2. 術者は鎖骨近位端を前方から強く圧迫し整復
(固定法)
鎖骨近位端に沈子をあて絆創膏添付し、厚紙副子で圧迫しながら8字固定、デゾー包帯を行う。
(予後)
1.固定困難で突出変形残しやすい
2.突出変形残しても、上肢の運動機能に大きな障害は残さない
肩鎖関節脱臼
(分類)
1.上方脱臼 多
2.下方脱臼
3.後方脱臼
※前方脱臼はない
肩鎖関節上方脱臼
(概要)
15歳~30歳の男子に好発。鎖骨脱臼の大多数を占める
(分類)
Tossy分類
第一度:関節包、肩鎖靭帯の部分断裂(捻挫)
第二度:関節包、肩鎖靭帯の完全断裂(不全脱臼)
第三度:関節包、肩鎖靭帯、烏口鎖骨靭帯の完全断裂(完全脱臼)
(発生)
1. 転倒・転落時に直達外力
2. 手掌や肘をつく介達外力
(症状)
1. 鎖骨遠位端が階段状変形
2. 関節部の圧痛、運動制限(特に外転)
3. ピアノキーサイン(鎖骨遠位部を上方から押してもすぐ戻る)
※鎖骨遠位端の骨折と類似。鑑別が必要
(整復法)
1. 助手は患側上肢を後上方へ引く
2. 術者は下方に転位した患側上肢を押し上げながら鎖骨遠位端を下方に圧迫し整復
(固定法)
絆創膏固定法
鎖骨遠位端を下方に圧迫し上腕を上方へ持ち上げた姿勢で
第一帯:鎖骨遠位端から前面は乳頭部、背面は肩甲骨下角よりも下に鎖骨遠位端を圧迫
第二帯:胸部正中近くから上昇して鎖骨遠位端の上を通り、上腕の後方を下降して
屈曲した肘部を回り肘から上腕の前方を上昇して再び鎖骨遠位端を通って背部正中線付近まで添付し患部の圧迫+上腕の引き上げ
腋窩に沈子をあて上腕を胸部に固定するようにラセン帯をまき吊り包帯4~8包帯
(予後)
1. 固定困難。変形治癒
2. 変形治癒⇒肩こり、倦怠感、上肢の放散痛、肩の違和感
3. 陳旧性で鎖骨近位端の肥大変形
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